最新の見聞録
「私は生まれも育ちも池田の人間です」と話すのは、福井市内で「池田町のそば」を冠に掲げたそば店『すいこう』のご主人・山崎光男さん(69)。店の外には味のある文字で「秘伝越前流手打ちそば」と書かれた印象的な看板。店内には古材を使った木のテーブルが置かれ、木工の里・池田を思わせる雰囲気も醸している。
ご主人がそばを始めたきっかけは「実は交通事故なんですよ」と意表をつく発言。「事故の相手が『池田町へ行くところだった』というので送っていったら、行き先がそば道場だったんです」。当時は池田にそば道場ができたばかりの頃。道場長はご主人の顔馴染みだった。「顔を出すと、せっかく来たんならそばを打って行け、と言われまして。本格的に打つのは初めてだったんですが、みんなが食べて『うまい』と言ってくれたんです」。小さい頃、おばあちゃんが家で打ったそばを食べて育ったご主人。高校生の頃には自分でもそば打ちをしていたという下地があり、飲み込みは早かった。
その後は愛好会を結成するなどそばの活動に精力的に参画。当時、池田屋事務長の谷端氏と道場長の川口氏とともにそばの段位制度を全国に先駆けて作るなど、福井のそば文化の確立にも大いに貢献した。
それまでさまざまな職業を転々としてきたご主人だったが、そばに関わったのを機に、腰を据えて本業とすることを決意。約10年前、新保スキー場にそば店を開始し、その後、池田町内に『手打ちそば 水車』を開店した。『すいこう』を開店したのは5年前。以後、『水車』は奥さんに任せているが、そば打ちは今でもご主人の担当。毎朝、池田でそばを打ち、福井でもそばを打つという日々を続けている。
ちなみにそばへのきっかけとなった交通事故の相手とはその後、縁が途絶えており、「事故がなければ、そばをすることはなかったと思います。災い転じてそばでしたが、人生って不思議なものですね」と、しみじみ昔を振り返る。
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