福井では昔からおなじみのそば店『つるきそば』。その創業者を父に持つのが現在、『つるきそば 佐佳枝支店』の主を務める小林昭彦さん(68)である。
「父親が中央総本店を開業したのが、昭和5年です。そば屋の息子に生まれたので、小さいときからそばには親しんできました」と幼少を振り返るご主人。戦時中は美山に疎開。「昔はあの界隈ではどこの家でも焼き畑でそばを作っていましたね。美山の家には大きな石臼があったので、近所の人がそばの実を挽きによく来ていました。父親は店をやっていただけあってもてなしがうまく、近所の人がそばを食べに来ることも多かったです」。
そんな家庭環境に育ち、20歳から本格的にそば職人の道へ。「父が創業した『つるき中央総本店』は、戦後になり叔父が引き継ぎました。そこで先輩が打つのを見ながら、そば打ちを習得しました」。ちなみに現在、中央総本店の店主を務めるのは、ご主人の従兄弟。父、叔父、従兄弟と、まさにそば一族の血統である。
本店で修業を積んだ後、昭和42年、暖簾分け(のれんわけ)で佐佳枝支店を開く。当時30歳、奥さんと2人でのスタートだった。店を開いた片町周辺には都銀の支店や織物関係の商社などが多く、ビジネスマンたちの昼食の店として重宝されるように。開店当時、10坪で始めた店は忙しさとともに増築を重ね、ピーク時には一日1,000食を下らないオーダーを受けたことも。従業員の数も増え、バイク10台、軽トラ3台を駆使して出前に奔走。昼時はまさに戦場のような慌ただしさだったという。
「今では昔ほどの忙しさはありませんがね」というが、それでも昼時にはのれんをくぐるビジネスマンたちの姿が後を絶たない。手軽でおいしい食事処として欠かせない存在として地域に根付いていることが伺える。
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